6月某日、薔薇が見頃と知り、旧古河庭園を訪ねて駒込へ出かけた。
旧古河庭園はJR駒込駅から徒歩10分程度の所にある。梅雨の合間の晴れの日、蒸し蒸しとして日差しは夏のように強い。日傘をさして駅から庭園へ向かう途中、アスファルトの道路に面した歩道には可憐な額紫陽花が燦めいていた。
旧古河邸の門には
「国指定名勝 都立 旧古河庭園」とある。ちなみに駒込には、同じく指定名勝である六義園もあり、特に紅葉の時期は人出で賑わう。
早速門から中に入ると、石造りの洋館が佇んでいた。そこから階段を降りると薔薇園、さらに下へ降りてゆくと日本庭園になっている。
この日、時間の都合で洋館の中に入ることはできなかったが、洋館と洋風庭園を設計したのは英国人建築家ジョサイア・コンドルで、明治から大正にかけて鹿鳴館やニコライ堂を手がけ、日本の建築界に多大な影響を与えた人物だという。
1階には喫茶室やビリヤードルーム、2階には伝統的な和室があり、大谷美術館HPには「和洋の様式を折衷することなく巧みな構成で和洋の調和を図っている(大谷美術館HP)」とあり、とても興味深い。また後日、洋館の中を見学してみようと思う。
さて、楽しみにしていた薔薇だが、あいにく暑さに痛みも早いのだろうか、花びらが水分を失い、よい状態の花が少なかった。
写真に撮ったのは、そんな中でも花の状態がよかったものである。
ダブル・ディライト Double Delight
1977 アメリカ:スイム&エリス
花が開くについて、緑から赤く染まります。美しさとフルーティーな香りの「二重の喜び」。(※)
丹頂 Tancho
1986 日本:京成バラ園芸
開花につれ白い花弁の先に紅がさす姿が鶴の「丹頂」を思わせることからついた名前です(※)
万葉 Manyo
1988 日本:京成バラ園芸
オレンジがかった淡い杏色。万葉のロマンをイメージした花です。(※)
薔薇園から斜面をさらに降りたところに、日本庭園が広がる。
庭園を手がけたのは、7代目 小川治兵衞、後に明治・大正期のカリスマ作庭家といわれる植治(うえじ)だ。
日本庭園には全く知識がない私でも、植治が京都の円山公園や内閣総理大臣を務めた西園寺公望邸を手がけたと知れば、その凄さは分かる。
武士より転身し庭園の道を志した初代 小川治兵衞に始まり、今も引き継がれる。
参考:植治(小川勝章:第十二代小川治兵衛)御庭植治株式会社|京都市東山区 (ueji.jp)
旧古河庭園は洋館、洋風庭園、日本庭園とあわせるととても広く、この日じっくり観賞できたのは薔薇園だけだった。これから行く人は、ガイドブック等で下調べをして、見所を押さえて訪れることをお勧めする。
名勝というと、石川の兼六園や京都の庭園の数々を思い浮かべてしまうが、都内にも名勝指定されている庭園が10数か所あると知った。「隣の庭は青い」で遠くの庭に憧れがちだが、都内の庭もなかなか趣深く、散策の価値ありだ。
また秋頃、薔薇と紅葉が美しい季節に、時間をたっぷり用意して訪れたいと思う。忘れずに洋館内も見学したい。
参考:旧古河邸 | 公益財団法人 大谷美術館 (otanimuseum.or.jp)
(※)薔薇の説明は旧古河庭園内の説明書きより引用