[千歳烏山] 『花信風』田畑 一作

[千歳烏山] 『花信風』田畑 一作 BLOG

2025年ももう8月(年度で考えるとまだ前半だけど)、ずいぶん写真を撮りためてしまった。

6月下旬の某日、地球の上の東京のあたりは本格的な夏の訪れを前に緑が盛んに精気を放っていた。
仕事で訪れた千歳烏山駅(世田谷区)付近で、“風”を感じさせる若い女性の像に出会う。手には花束を持ち、少女といってもいい若さだ。

『花信風』 1983年 田畑 一作
花信風は「かしんふう」と読み、大辞林には「初春の風。花の咲く時節の到来を告げる風」とある。こんな美しい風の名があったとは知らなかった。

重たい素材で作られた像だが、スカートの皺や、何より横から見た時のショールが女性の背中の後でふんわり風にふくらむ様が軽やかで、作家の巧に感動する。それから、斜め後ろから見た踵のリアルさ。血が通っているようだ。

ちなみに立体的なアートは時間が許せば、前からだけではなく、横、後ろと一周まわってみると、その魅力をさらに味わえるからおすすめだ。

この像を作ったは1915年京都に生まれ(大正生まれ)、1994年に東京都世田谷区で逝去した田畑一 作(たばた いっさく)。東京文化財研究所のHPによると、日本画家の父を持ち、中学を卒業する頃には彫刻の道を志していたのだとか。数々の入選・受賞歴、国内に沢山の彫像や庭園、ガーナにある野口博士記念庭園を手がけたのもこの人で、来歴を読むとまさに芸術家の人生を生きた人のようだ。むーん、すごい!

彫刻を含む公共空間の制作にあたっては、「岩はきずいて草をすまわせる」ことをモットーに設計等も行なった。作品が「風吹けばにおう花のように」あることを目指し、大地と生命力が均衡を保ちつつ存在する植物のように自然と調和する造形を追求した。
東京文化財研究所 「田畑一作」より引用)

これを読むと、なるほど、若い女性の像のまわりに風がめぐり、踵には血が通っているわけが分かる。芸術家の魂は女性像の中に永遠に生き続けるだろう。


烏山寺町 案内版


最後に備忘録。

同じ世田谷区に住みながら、千歳烏山を訪れたのはこれが初めてで、駅そばの案内版を見て周辺には寺院が多い烏山寺町があるそうな。
”烏”と地名についているのもそれなりの由縁があるのだろうが、後日調べてお寺も散策したみたいな。

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