この記事で取り上げているのは下の地図(丸の内ストリートギャラリーHPより)内の〇をつけたアート作品です。他の作品についても知りたい方は [東京] 丸の内口付近パブリックアートめぐり①もご覧ください!
『私は街を飛ぶ』2022 舟越桂 (日本 )
路上でぱっと一際目立つ、白い女性の像。オーラというか、奇妙で強い存在感を放っている。
美しいけれど哀しげでもあるような、不思議な表情を浮かべた女性。その頭の上には街が載っている。生えているというべき?
近づいてよく見てみるとそこに在るのは「教会」「並木」「本」。
お顔の青い眉や水色の髪は空のイメージなのだろう、ノスタルジーを誘われる。
作家はこの記事を書いている今年(2024)の 3月に亡くなった彫刻家船越圭である。
船越圭の彫刻は本の装丁で使用されていたりと、どこかで目にしたことがある人が多いはずだ。多くの作品の像は首が長く、形容しがたい独特の表情をしていて個性的だ。
この作品はブロンズ像だが、船越圭の作品には「記憶」や「想像」を呼び起こす具体的なモティーフを頭部に表現するシリーズが木彫作品でも用いられているそうだ。
参考:Katsura Funakoshi official site
『Matching Thoughts』2022 H&P.シャギャーン (日本 )
「はて?」と頭をかしげている像なのかな??と観る側も頭をかしげたくなるこのアート、どう解釈するかは自由だと思うが、この作品を手がけたアートユニットの一人アンリ・シャギャーンはインタビューで次のように話している。
「秘めた怒りを持つ人と聖人のような二者の関係です。若いツッパリ(リーゼント)と色々場数を踏んできた経験者(アフロ)の対比というか」
ふーむ、なるほど。言われてみればそんなふうに見えてくる。面白い!
インタビュー記事を読むと、2人の作家がどんなに楽しんでこの「2体で1作品」を創り上げたかが分かる。
近代美術へのリスペクトとされるこの作品、そう聞くと難解な気もしてくるが、インタビュー記事からは作家たちが気さくで、丸の内でこの作品を観る人たちに親近感を持っていることが分かり、読んでいて何だか嬉しい。
詳しく知りたい人は下のインタビュー記事を読んでみることをおススメする。
参照元:https://www.marunouchi.com/lp/street_gallery/artist/chaguin.html
『白のマスク』1969 澄川喜一 (日本)
作家は日本の近代彫刻を代表する彫刻家であり、東京スカイツリーのデザイン監修者である澄川喜一。島根県には大蛇「orochi(オロチ)」のモニュメントがある。
コロナ禍を経た私には白のマスクと聞くと、もう口を覆う衛生用品のマスクしか思い浮かばないのだけど、氏のマスクには深い哲学が宿っているだろうな。
終戦後の日本で親の猛反対にも意思を貫いて芸大に進んだ、その人生にも胸を打つものがある。すごい芸術の魂をもって生まれてきた人がいたものだ。
「80年の人生で思うことは、意志を貫くことの大切さ。信念に基づき好きなことをする。
陳腐かもしれないが若い人に言いたいことは、好きなことを簡単にあきらめるなということ。
やり続ければいつか夢はかなう」
澄川喜一の言葉だ。
参照元:彫刻家として|彫刻家 澄川喜一 sumikawa kiichi (sumikawa-art.com)
『われは南瓜』2013 草間彌生(日本)
草間彌生というと「水玉」とばかり思ってきたが、「南瓜」のモチーフが最も好んで用いられているとのこと。
南瓜のヘタの部分が水玉のベレー帽になっていて可愛い。
写真を正面からしか撮っていなかったことを少し後悔している。横から見ると、女性の体のラインを思わせるような曲線になっているようだ。
アート作品を撮影する時は、色んな角度から撮るようにしよう!
『小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥』2022 中谷ミチコ (日本)
白い壁に繊細な線と色で描かれた女の子。作家の中谷ミチコは、丸の内に白い紙をぺらっと置くようなイメージでこの彫刻を作ったそうだ。
中谷ミチコは凹凸が反転した立体作品を制作しており、独特な世界観がその作品から醸し出される。この壁面がカーブを描いている作品は見る角度によって女の子も変化していく。
写真ではなかなか伝わりにくいこの彫刻の不思議な感じ、動画に撮ってきたのでよかったら観てほしい。
白い壁面の裏側は対照的に金ぴかになっていて、そこに青い鳥が翼を広げて飛んでいる。白い紙の中のストーリーと金ぴかの空にはばたく青い鳥。鳥は女の子とは一見、関係がなさそうだ。だが、無関係であるようにみえて、想像の世界で繋がっているものかもしれない。
参照元:丸の内ストリートギャラリー | Marunouchi.com
『展望台』1990 ジム・ダイン (アメリカ)
「おしゃれなマネキン!」と思って眺めていたが、後で調べたところ、アメリカのポップアートのアーティストであるジム・ダインが『ミロのヴィーナス』を模して作ったものだという。実物よりも小さく作られた白い2体の女性像に頭部はなく、荒く削られ面取りされたボディは、しかし美しさを感じる。
高く聳える崖のような展望台のはるか下は海?
海にも、パリの街角にも似合いそうなアート作品。アーティストは何を想ってこの作品を作ったのだろうか?
『ルネッサンス』1985 キム・ハムスキー(ヴェトナム-フランス)
ふむふむふむ~、「ルネッサンス」と名付けられたこの作品、正面から見たお顔は確かにルネッサンス(※)であった。めくれたような頭皮が髪の毛であり、髪の毛であるようでいて、枕でもあるような、頭にあてられた腕にも見えなくもないし、とらえがたく不思議な作品である。切れ長の目は半びらきで夢うつつな表情だが、どこか高貴さも覚える。
しかし、後ろから見た時は「あ!キュロちゃんいるー!」と思って通りの向こうから駆け寄ってしまうのも無理はない。そのくらい、チョコボールに似た形状であり、色艶なのである。
すごく親しみを覚えたアート作品だ。
参照元:https://www.marunouchi.com/lp/street_gallery/artist/kim-hamisky.html
※ルネッサンス:フランス語で「再生」、「復活」という意味。
14世紀にヨーロッパで起こった、「ギリシャ、 ローマの古典文化を復活させよう!」という運動のこと。
引用元:https://easy-sekaishi.com/renaissance/#:~:text=%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E3%82%AE%E3%83%AA
丸の内口付近パブリックアートめぐり③に続く
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