4月某日、地球の上の東京のあたりはよく晴れて、外出気分を誘われる。新宿ピカデリーで映画『陰陽師』を観た後、このまま帰るのももったいない気がして表参道へ。カフェでお茶を飲んで過ごし、青山ファーマーズマーケットと青山ブックセンターを物色して満足して帰ろうとしたところ、なじみのある黒いアートが目に入ってきた。
表参道の国連大学近くにある黒い柱。通るたびに近寄って写真を撮ることもあったが、よく調べてみたことがなかった。この機会に調べてみよう!
国連大学付近と書いたが、正確には国連大学本部ビルの隣にある青山オーバルビルの敷地にある。だから、オーバルの塔だったのね。
ちなみに、オーバル(oval)とは卵形、長円形、楕円等なめらかな曲線を持った図形を差す。青山オーバルビルの形がオーバルなのだ。
速水史郎は香川県出身の世界的な彫刻家で、黒陶と石堀の作家として知られる。石堀については特に記念碑的な作品やパブリックアートが多く、全国100か所を超える場所に作品が設置されているそうだ。(参照元 Wikipedia)。
東京都庁には「宇宙からのメッセージ」(1991)という私が好きな感じのアート(好きなネーミングのアート)が置かれているらしい。今度都庁に行ったら、撮ってこようと思う。
オーバルの塔は御影石だが、これが例えばステンレスで銀色だったり、あるいはまた別の素材で青や黄色、赤等カラフルなものであれば全然違う印象になるのだろう。オーバルの塔は黒光りするずっしりとした存在感で、でも、静かに街並みに溶け込んでいる。
速水史郎はこれを書いている現在96歳で、現役作家として活動している。昨年(2023年)の10月にも東京銀座で個展を開催し、150点を超える新作が発表されたのだとか。
(詳しくは次のリンクからYoutubeでご覧いただけます。
https://youtu.be/Er9DobA0p5E?si=4mwnZgd-Je04ysIB )
その際インタビューで翌年の創作の構想について尋ねられ「ボチボチ・・・」と答えていて、そのやむことのない創作意欲が伝わってくる。
まさに生涯現役。す・ば・ら・し・い!こういう人のことを考えると、やりたいことに取り組む時間がまだまだ残されている実感が沸いてきてありがたい。
近年、様々な場面でテクノロジーの進化の速さと膨大な情報量を目の当たりにするが、それを思うにつけても、こうしていつも同じ姿でそこにあり続けるアートはいいなあと思う。当然だが、時の経過による劣化に耐える素材であることも長く愛されるアートには大切なのだろう。
ちなみにお墓にも使われる御影石だが、長持ちして丈夫な上に、磨けば磨くほど輝くのだとか。知らなかった。まるで、人間みたいですね。
「AIが面倒な仕事をどんどん引き受けてくれ、アート観賞やスポーツに人間がもっと時間とエネルギーをさける日がくるとよいな」
と思った休日の午後だった。