10月某日、地球の上の東京のあたりは薄曇りだが、お出かけしたくなる秋の軽やかな空気が街に満ちていた。
8月、9月と急に仕事が忙しくなり、残業続きの不規則な生活に区切りをつけたく、お気に入りの美容室で髪をきれいにし、夕方は六本木へ出かけた。過ごしやすい季節のうちに、色んなところにお出かけしておきたい。
昔、六本木というとバブリーでギンギンギラギラしたイメージが強かったが、今はずいぶん違うようだ。最近は文化の発信地であり、自然と調和した現代建築とアートが集まる街という印象がある。
この日、六本木を訪れたのは、吉岡徳仁さんの新作「ガラスのトーチ」と「炎のモニュメントーガラスの炬火台」がお目当て。17時半頃から吉岡さん自身によって点火されると知り、観に行ってきた。
ちなみに、吉岡徳仁さんは国際的に評価を受けているアーティストで、東京オリンピック2020のリレートーチや東京ミッドタウン八重洲の「STAR」も手がけている。
トーチや炬火台の実物を間近で観る機会はそうない。そしてどうせ観るなら、時間は限られている、ネット上の薄暗くドロドロしたニュースや映像よりも、美しく、力強いものに触れたいではないか。
九州で過ごした子供の頃、掃き集められた落ち葉で焚き木をすることがあったが、滅多にないその火遊びは楽しいものだった。また、アロマキャンドルは香りだけではなく、炎のゆらめきに深い癒しを感じる。炎には電灯の光とは異なる魔法がある。
炎は人間の魂を原始の彼方から揺さぶるのだろう。
沢山の人が観に集まっていて、私と同じようにスマホをかかげて懸命に炎をカメラで捉えようとしていた。
「皆、実物じゃなくてカメラ越しにしか観てないよね」という声がチラホラ聞こえてきて、確かにそのとおりだが、夕闇に光と熱を放つ炎のダイナミックさを写真の中に収めたい気持ちは私にはよく分かる。炎のとらえがたい美しさを何とかカメラで捕まえてみたいという想い。
帰る頃、雨がぱらついてきたが、心地よかった。
「風の庭(※)」は夜風が涼しく、家族やカップルが座って和やかな時を過ごしているのが目についた。
六本木は洗練されていて、眺めのいい街。
またゆっくり時間をとって出かけたい。
「風の庭」
「風の庭」説明より抜粋
Creator:アレクサンドラ・コヴァレヴァ+佐藤 敬/KASA
東京ミッドタウンの青々強いガーデンに大きな絨毯を浮かべるようにやわらかな図形を描き「風の庭」と名付けました。波紋のようにリズムよく繰り返される正円による幾何学模様は、眺める場所によってその姿を変えうまく形をつかめません。1つ1つを覗き込むと周辺を映し込んだ小さな風景が揺らぎその輪郭をぼかします。些細なものが集まり大きな風景をつくる。それは私たちが暮らすこの地球に対しても同じことなのかなと思ったりします。